ポンプ 全揚程 計算ツール
配管区間ごとに管・呼び径・流量・長さと継手・弁の個数を入力し、実揚程、機器の損失、余裕率を加えて、ポンプの全揚程と軸動力を求めます。直管の損失は、配管サイズ選定ツールと同じ Darcy-Weisbach の解法です。
計算の根拠
区間ごとに、直管・継手・弁・相当長の損失を足し合わせ、実揚程と機器の損失を合算してから余裕率を掛けて、全揚程を求めます。ポンプの流量は、区間のうち最大の流量とします。
| 項目 | 式 | 説明・根拠 |
|---|---|---|
| 直管の損失 | Δp_L = R · L, R = (f / D) · ρV²/2 | f は Colebrook の式(層流は 64/Re)。粗度は管の種類ごとの初期値(鋼管 0.046 mm、銅管 0.0015 mm)。配管サイズ選定ツールと同じ関数 |
| 継手・弁の損失 | Δp_K = K · ρV²/2, K = f_T · Σ n·(L/D) | Crane TP-410 の方式。n は個数、L/D は下の表 |
| 完全乱流域の摩擦係数 | f_T = [−2 log₁₀(ε_T / (3.7 D))]⁻², ε_T = 0.046 mm | Crane は、f_T を清浄な市販の鋼管の完全乱流域の値と定義しています。銅管・ステンレス管にもこの値を使います(50A SGP:0.0190)。Crane の表の f_T とは、呼び径によって最大 4 % ほど異なる場合があります(例:4インチは表 0.017、式 0.0163) |
| 相当長を直接入力 | Δp_E = R · L_e | 表にないストレーナや特殊な弁は、メーカー資料の相当長(m)を入力します |
| 全揚程 | H = (H_s + Σ Δp / (ρ g) + H_e) × (1 + m) | H_s は実揚程(吐出し側の水面が低い場合は負)、H_e は機器の損失水頭(kPa は ρ g で割る)、m は余裕率。この計算ツールは余裕を合計全体に掛けますが、摩擦損失にのみ余裕を見込む実務もあります。H が 0 以下の場合は、ポンプが不要な条件として表示します |
| 水動力・軸動力 | P_w = ρ g Q H, P_s = P_w / η | Q は m³/s、H は m、η はポンプ効率(メーカーの曲線の運転点の値) |
継手・弁の相当長 L/D
Crane TP-410 の付録にある代表値のうち、出典を確認できたものだけを載せています。K は 50A SGP 管(f_T 0.0190)の例です。ほかの継手・弁は、相当長の直接入力欄に入力してください。
| 継手・弁 | L/D | K (50A SGP) |
|---|---|---|
| エルボ 90° | 30 | 0.57 |
| チーズ(直進) | 20 | 0.38 |
| チーズ(分岐) | 60 | 1.14 |
| 仕切弁 | 8 | 0.15 |
| スイング逆止め弁 | 100 | 1.90 |
計算例
水 20 °C (ρ = 998.21 kg/m³)、SGP 鋼管。区間1:80A(内径 80.7 mm)、600 L/min、直管 50 m、エルボ 6・チーズ直進 2・仕切弁 2・スイング逆止め弁 1。V = 1.955 m/s、f = 0.01960、R = 463.3 Pa/m なので、直管の損失は 23.16 kPa。Σ L/D = 6×30 + 2×20 + 2×8 + 100 = 336、f_T = 0.01720、K = 5.780、ρV²/2 = 1,907.7 Pa なので、継手・弁の損失は 11.03 kPa。合計 34.19 kPa = 3.493 m。
区間2:65A(内径 67.9 mm)、300 L/min、直管 30 m、エルボ 4・チーズ分岐 1・仕切弁 1、ストレーナの相当長 3 m。V = 1.381 m/s、R = 297.0 Pa/m:直管 8.91 kPa、Σ L/D = 188、f_T = 0.01790、K = 3.365 で継手・弁 3.20 kPa、相当長 0.89 kPa。合計 13.00 kPa = 1.328 m。
実揚程 15 m、冷凍機蒸発器 50 kPa = 5.108 m。小計 15 + 4.821 + 5.108 = 24.93 m に余裕 10 % を掛けて、全揚程は 27.42 m(268.4 kPa)。水動力 = 998.21 × 9.80665 × 0.01 × 27.42 = 2.68 kW、効率 60 % なら軸動力は 4.47 kW です。
限界
ポンプの選定と性能曲線(運転点・効率・NPSH)は、メーカーの資料で確認してください。この計算ツールは1つの経路の直列の合計のみを扱い、並列に分岐した部分の流量配分や、調節弁による損失は計算しません。
L/D は代表値のため、実際の継手や弁の損失は、メーカーやサイズによって異なります。メーカーの値がある場合は、相当長の直接入力欄を使ってください。
出典
- Crane Co., Technical Paper No. 410, Flow of Fluids Through Valves, Fittings, and Pipe:K = f_T·(L/D)、L/D の表、f_T の定義
- ASHRAE Handbook Fundamentals (SI)、「Pipe Sizing」の章:Darcy-Weisbach・Colebrook の式
- IAPWS R6-95(水の密度)、IAPWS R12-08(水の粘性)
- JIS G 3452 配管用炭素鋼鋼管、JIS G 3459 配管用ステンレス鋼管、ASTM B88 銅管
最終更新 2026-10-07。