冷却コイル 能力計算ツール(実測2点)
コイル入口と出口で測った温度・湿度と風量から、実際の冷却・加熱能力を求めます。温度差の式(ρ·Q·Cp·Δt)と比エンタルピー差の式(ṁ·Δh)の値を並べて、その差と理由を示します。
計算の根拠
比エンタルピー差の式は、湿り空気線図の計算ツールの状態変化カードと同じ定義です。体積風量は、入口の状態の比容積で乾き空気の質量流量に換算します。
| 項目 | 式 | 説明・根拠 |
|---|---|---|
| 乾き空気の質量流量 | ṁ = V / v₁ | V は入口で測った体積風量、v₁ は入口の比容積 (m³/kg 乾き空気)。ASHRAE Fundamentals 2017 1章 式28 |
| 全熱(比エンタルピー差の式) | Q_t = ṁ · (h₁ − h₂) | h は湿り空気の比エンタルピー(式32)。冷却の場合は、コイルが除去する熱 |
| 顕熱 | Q_s = ṁ · (1.006 + 1.86 x₁) · (t₁ − t₂) | 湿り空気の比熱は入口の絶対湿度で求めます。計算ツールの状態変化カードと同じ |
| 潜熱・凝縮水量 | Q_l = Q_t − Q_s, m_w = ṁ · (x₁ − x₂) | 潜熱は全熱から顕熱を引いた残り。凝縮水量は絶対湿度が減った分 |
| 温度差の式(現場の概算) | Q = ρ · V · Cp · Δt, ρ = 1.2 kg/m³, Cp = 1.006 kJ/(kg·K) | 20 °C 付近の乾き空気の密度と比熱の概算値。湿度の変化(潜熱)を数えないため、冷却除湿コイルでは顕熱分しか求まりません |
計算例
入口:乾球 27 °C・湿球 19.5 °C(相対湿度 49.8 %、絶対湿度 11.10 g/kg、比エンタルピー 55.48 kJ/kg、比容積 0.8655 m³/kg)、出口:乾球 14 °C・湿球 13 °C(相対湿度 89.6 %、絶対湿度 8.92 g/kg、比エンタルピー 36.62 kJ/kg)、風量 10,000 m³/h(入口基準)。
ṁ = 10,000 / 3,600 / 0.8655 = 3.210 kg/s。全熱 = 3.210 × (55.48 − 36.62) = 60.54 kW(17.2 USRT)。顕熱 = 3.210 × (1.006 + 1.86 × 0.01110) × 13 = 42.84 kW、潜熱 = 17.70 kW、凝縮水量 25.2 kg/h。
温度差の式は 1.2 × 2.778 × 1.006 × 13 = 43.59 kW で、比エンタルピー差の式より 28.0 % 小さくなります。差の大部分は潜熱(全熱の 29 %)で、残りは ρ·Cp の概算による差です。
限界と実測の誤差
実測の誤差は、結果を大きく左右します。コイル出口のような湿った空気では、湿球温度が 0.5 K ずれると比エンタルピーで約 1.3〜1.7 kJ/kg(この例の出口・入口)違うため、この例なら全熱が 7〜9 % ほど変わります。湿球温度は、湿らせた芯と十分な風速(約 3 m/s 以上)で測定し、相対湿度センサーは出口の飽和付近で誤差が大きくなります。
風量の測定(ピトー管のトラバース、風速計)の誤差は、そのまま結果に比例します。出口では、コイル直後の温度の偏り(成層化)や水滴の飛散を避けて、複数点の平均を使ってください。
標準大気圧(101.325 kPa)で計算します。送風機の発熱やダクトからの熱取得は、別途差し引いていません。
出典
- ASHRAE Handbook Fundamentals 2017 (SI) 1章 Psychrometrics:比エンタルピー(式32)・比容積(式28)・湿球温度(式33・35)
- 現場の概算 ρ 1.2 kg/m³・Cp 1.006 kJ/(kg·K):20 °C・海面の標準空気
最終更新 2026-10-07。